市長の底力見た/議会人の意識を 名古屋市議選・記者座談会
2019年4月10日
選挙戦で、減税の候補の多くは「本人」ののぼり旗を立て、河村市長の政策をアピールした=名古屋市瑞穂区で |
七日投開票された名古屋市議選では、河村たかし市長率いる減税が六議席増やして第三会派に浮上した。自民は一議席減で最大会派の立場を保ち、立民と国民による統一会派の名古屋民主も一議席減で元の第二会派のまま。選挙戦中、全区に足を運び、無投票当選者を除く九十四候補のほとんどの訴えを聴いた記者が、結果の裏にある事情や今後の市政の課題を語った。
■減税ショック再び
記者A 不祥事や離党が続き、良いニュースの少なかった減税が驚きの巻き返しを見せた。
記者B ある新人女性を追ったが自転車から手を振っていただけ。区内の六十代主婦は「候補がどんな人かは知らない。市長が掲げる『議員報酬八百万円』に共感した」と言っていた。「選挙モンスター」と呼ばれる市長の底力を見た。
記者C 減税ブームが去った今、政策の訴えだけでここまで伸びるのか。
記者A 河村市長が懇意にしている有力者が票のとりまとめに動いている事実が確認できた。その男性は「元来は保守系だが今は市長派」という。こうした地域の集票のキーマンが、市内全域で減税票を押し上げたのではないか。
■不祥事の影響は
記者B 自宅ブロック塀が違法だったことが発覚した名東区(定数五)の減税の浅井康正さんは前回より千七百票も積み増し、三位通過した。
記者C 他会派の追及は厳しく、別の減税議員が「『減税いじめ』が市民に伝わって、同情票が集まった」と言っていた。不祥事が逆の効果を生んだかもしれない。
記者A 減税議員への暴言騒動が発覚した瑞穂区(定数三)の自民、藤田和秀さんもトップ当選を果たした。
記者B 藤田さんには声援を送ったり手を振ったりしている人も多かった。父親の時代からの地盤に加え、本人の実績もあって揺るがなかった。
■自民消極、民主伸びず
記者C 自民が新人擁立を見送った消極策の背景には、夏の参院選愛知選挙区(改選数四)で二人目を立てようとしない自民の県連や党本部への反発もあるようだ。「それなら自分たちも立てない」と。市議団には積極策を推す若手や中堅もおり、方針にかかわったベテランは「最大会派が維持できなければ切腹ものだった」と漏らした。
記者A 立民は十五候補で当選十一人と伸び悩んだ。守山区や名東区は擁立が遅れ、新党ゆえの人手不足で十分な支援体制が取れなかった。番狂わせは、中電労組が支援する国民現職を立民新人が追い落とした瑞穂区。擁立をめぐる両党のしこりが、関係悪化を招く可能性もある。
■今後の議会は
記者C 減税は選挙のたびに議席を増やし、不祥事などで減っていくの繰り返し。このパターンが続けばまた市議会が混乱する。
記者A 減税内部からも「同じ失敗をしないように新人五人の教育をしなくてはいけない」との声が出ている。議会人としての立場を意識した行動をしてほしい。