名古屋市議選、減税躍進なぜ? 他党票獲得や「報酬減」評価か
2019年4月9日
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名古屋市議選(定数六八)で、河村たかし市長率いる減税日本が十四議席を獲得し、改選前から六議席を上積みした。党勢の退潮に加え、厳しい市政運営が続き、前予想は決して高くはなかった。いっときの復調か、地域政党が根ざしてきたのか。
激戦から一夜明けた八日の名古屋市港区。初当選した減税新人、沢田仁実さん(35)の事務所の片付けは、早々に終わっていた。支援した近くの不動産業者の男性は「当選にも驚いたが、誰もいなくなっていたので、また驚いた」。
沢田さんは、地元に縁もゆかりもない。選挙戦でほとんど街頭演説はせず、河村市長の演説を選挙カーから流すだけ。しかし、前回の減税候補より三千票余を積み増して三位当選。敗れた四度当選の共産のベテランは「手応えは良かったんだが」と首をひねった。
定数七減の今回、減税は減員区の港区など四選挙区で共産を追い落とし、共産幹部は「完全に食われた」とうなだれた。
四年前の前回は、減税を含め、維新や次世代など「第三極」が乱立、票が分散した。今回は、維新の愛知県本部が減税に協力するなど、減税に集約したとみられる。維新の元職は「愛知では支持層がフワッとしている。一部が減税に流れてもおかしくない」と話す。
河村市長は八日の定例記者会見で、公約の「市議報酬八百万円」が躍進の理由と主張した。「ワシもおっかあに怒られながら給与削減を続けとる。議員も高すぎるのはいかんという市民の声は大きいですよ」。新鮮味に欠け、関心を失ったかにみられた政策だが、票を減らしたある自民現職は「ボディーブローのように効いた」と明かした。
選挙直前には自民議員による減税議員への暴言問題が発覚。国民の現職は「『減税はいじめられてかわいそうだ』という声も聞こえた」と、少なからぬ影響を感じたという。
今回、減税から新人が五人誕生。不祥事や内部分裂で離党者が続出した過去があるだけに、河村市長は「そうならんようにすることが、この四年間のワシの宿題ですわ」と破顔続きの会見の最後を、神妙な表情で締めくくった。
(谷悠己、中山梓)