<名古屋市議選ルポ> (6)南区、緑区
2019年4月5日
南区(定数四)と緑区(同七)は定数減で、二〇一五年の前回選で下位だった候補や新人たちの争いが激化している。前回はいずれも維新の党(当時)の候補が一定の支持を集めており、維新票の行方にも注目が集まる。
【南区】
「大変厳しい戦い。政治は誰がやっても同じと思っている人は、今回だけはタカハシと書いてほしい」。定数一減となった南区で、前回五位の共産・高橋祐介が畑仕事中の人たちに頭を下げた。消費税増税反対などの国政課題と子ども医療費拡大などの市政課題を織り交ぜて訴えている。
前回、高橋より千百票少ない六位で落選した減税は当時、中区で維新から立った榎沢利彦を告示直前に公認。しかし、減税と協力する愛知維新の会の推薦は得られなかった。「報酬八百万円貫くよ」などと自作した歌を選挙カーで流して回る。
四位だった国民の橋本浩幹は「六年前から訴えてきた敬老パスの私鉄、JRへの拡大が目前になっている」とアピール。前回維新で出た元候補者も国民衆院議員の秘書として陣営を支えている。
三位だった公明は新人の坂井大輔が「少子高齢化の時代に責任ある社会保障策を提案できるのは私たちだけ」と、党名を前面に訴えている。二位当選の自民・藤沢忠将は全学区を「桃太郎」の隊列で練り歩き、「党本部とのパイプを生かし水害ゼロのまちづくりに取り組む」と語る。トップだった自民・横井利明は全学区で演説会を開き「半世紀で五万人以上減った区の人口を増加させる」と約束した。
【緑区】
電動車いすの上でマイクを握り、立民の新人小野沢美希がスーパー前で話し始めた。最年少候補の二十八歳で、難病による障害がある。「ベビーカーを押すお母さん、重度の障害者、高齢者が積極的に街に出て行ける環境づくりが大切」
定数が一減。前回、最下位当選者をわずか三百票上回った立民の前職が県議選に転出した後継に注目が集まる。
前回四千余り獲得した維新の票。選挙では協力関係にある減税が取り込めるか。
前回最下位当選で、その後衆院選に出た余語冴耶香は自ら選挙カーを運転。「議員報酬を八百万円に戻すには皆さんの力が必要です」と声をからした。六位だった増田成美は「緑区は歴史的、文化的価値があるものが多い。いっそう注目されるよう力を入れたい」と選挙カーから訴える。
前回五位の共産、佐橋亜子はスーパー前で「命と暮らしを守る緑区にしていきたい」と強調した。
自民は現職二人がともに四選を目指す。中里高之は「地域の経済と雇用をしっかりと守る」。岩本崇宏は犬猫の殺処分数に触れて「一匹でも多くの命を救う仕組みをつくる」と約束する。
四選を目指す立民の岡本康宏は「保育園整備と放課後の居場所づくりをしっかりやっていきたい」と宣言。前回トップの公明の近藤和博は「小さくても大切な声や困り事を聞き、市政に届けたい」と演説した。
幸福実現党からは竹村依子が立候補している。
=文中敬称略(統一地方選取材班)