<名古屋市議選ルポ> (3)熱田区、瑞穂区
2019年4月2日
河村たかし市長率いる減税は、前々回選での大勝からの勢力低下が著しい。現有議席がない選挙区での勝利に再起を懸けている。新人を擁立した熱田区と瑞穂区、元職が挑む東区はいずれも定数が二、三の少人数区で、減税の真価が問われる。
【熱田区】
「政治ってどす黒いイメージじゃないっすか。僕みたいなのが出ることで、変えたいんですよね」
夕刻の金山駅前。羽織はかま姿、扇子を手に減税の憲俊(けんしゅん)が漫談さながらに演説した。俳優で、おもてなし武将隊の初代信長役。河村市長が秘蔵っ子として擁立した。自転車街宣と選挙カーを組み合わせて浸透を図っている。
挑戦を受ける自民の服部慎之助は選挙カーを小まめに回し「神宮前のシャッター商店街とボストン美術館が閉館した金山駅南口のにぎわいを取り戻す」と約束。前回首位の立民・森智雄は国民衆院議員との街頭演説で「二十一年の小学校教員の経験を生かし、子どもにやさしい名古屋、熱田をつくっていく」と宣言した。
共産の西田敏子は住宅街を回って「女性の代表として働くお母さんの声を届ける」と呼び掛けている。
【瑞穂区】
前々回、減税はブームとともに当時定数四の瑞穂区で二議席を奪ったが、離党などで今はゼロ。前田恵美子は自転車用ヘルメットと運動靴姿の「河村流」で区内を回る。
かつて自民市議だった夫が河村市長と交流があり、減税の復活を託された。唯一の女性候補として「身近な問題を積み上げ、生活のお役に立ちたい」と母親らに声を掛ける。
自民現職は藤田和秀。この選挙直前に減税議員への「クズ」などの暴言問題が降って湧いた。従来通り福祉や教育団体から応援を得て、妻と娘と繰り出す街頭では「アジア競技大会を契機に瑞穂陸上競技場で世界最高水準のバリアフリー対策を」と訴えた。
国民現職土居芳太は「働く者の代表として戦わせていただいている」と強調。立民新人の久田邦博は地元出身や三十五歳の若さをアピールし「若者の思いを市政に届けていきたい」と声をからす。共産の尾関雅美は「無駄な税金の使い方をしているのが庶民革命の河村市長」と主張した。
【東 区】
河村市長が自宅兼事務所を構える「お膝元」東区。二〇〇六年に秘書になって以来、河村と行動をともにする減税の佐藤夕子は新元号が決まった一日午後、約五十人の支援者に「東区の候補は四人中三人が男性。一つは女性に」と支持拡大を依頼した。
一昨年、市議から衆院選に出馬したため牙城の東区で減税は空白。奪還に向け昨夏から各戸訪問を始めた。
佐藤の辞職にともなう補選に通った立民の国政直記。「市政一筋。よそ見をすることなく、一本道を歩く」と佐藤をけん制。平成生まれの若さを強調し、スマートフォンのアプリの位置情報機能を使って地域内を隅々まで回る。
七期目を目指す自民の中川貴元はPTAの仲間と自転車街宣を展開し、「医療、介護、福祉の充実に努めたい」と主張。共産・村瀬和弘は「自公政権直結で大型事業を推進している河村市政をチェックする」と強調した。
=文中敬称略(統一地方選取材班)