<名古屋市議選ルポ> (1)中村区、西区
2019年3月31日
四月七日投開票の名古屋市議選(定数六八)の全選挙区で候補者の訴えを記者が聞き、激戦の構図をリポートする。初回は定数が五から四に減った中村区と西区。いずれも現職が五人全員出馬し、前回二〇一五年に最下位当選だった共産勢に試練が待ち受ける。
=文中敬称略
【中村区】
「安倍政権を支える自公に三議席も取らせてはいけない。一つは私に託して」
昼下がりのスーパー前で共産の藤井博樹が叫んだ。前回選では四位当選と二千票超差。市政での実績より国政での政権との対決姿勢を強調する街頭演説に加え、支持層以外への電話作戦で掘り起こしを図る。
告示日の朝は、区内の豊国神社の参道に恒例の「九の市」が立った。各陣営が集結し、買い物客の気を引き合った。
最初に演説したのは前回首位の立民の鵜飼春美。「子ども、お年寄り、働く人の幸せを実現する」。教員経験を強調し、親子連れに意識的に手を振った。
前回四位の公明の中村満は危機感たっぷり。応援の衆院議員と並んで「大災害が来ても一人も死傷者を出さない覚悟だ」と叫ぶと、取り巻く百人ほどの支持者から手拍子が起きた。
入れ替わって登場した前回三位、自民の斎藤高央は支持者の動員はせず「ここ駅西地区に秀吉公を中心とした武将観光を根付かせる」と、政策中心の訴え。前回二位の自民、小出昭司は参道内の事務所周辺を「桃太郎」スタイルで練り歩きながら「誇りに思えるふるさとをつくる」。
最後に現れた減税・佐野勉は鳥居前で「河村市長を助ける男です」と連呼すると自転車街宣へ向かった。
十年前に市長選経験がある黒田克明も諸派で出馬した。
【西区】
ショッピングモール前に白いスーツ姿で立った共産の青木朋子が、買い物客に大きく手を降り続けた。「暮らしとかけ離れた大型事業を見直す。引き続き市議会で働かせてください」。初当選の前回は四位と千百票差。六期務めた前任者の県議選候補者と並んで遊説し、知名度アップに努めている。
前回四位の公明の沢田晃一は今回、党から市内の「最重点地区」に位置付けられ、幹部も続々と応援に。選挙カーの助手席でマイクを握り「老朽化した小学校のトイレを改善してきた」と実績を強調する。
前回三位の減税の鹿嶌敏昭は税金で補助される選挙カーを避け、徒歩に徹する。七十二歳。若々しく見えるようドラゴンズのユニホーム姿で「子どもたちに誇れる政治を」と書かれたビラを配って回った。
前回二位の国民の上園晋介は百九十カ所での演説が目標。子どもが多い地域では「通学かばんを軽く」、庄内川の近くでは「東海豪雨を踏まえた防災対策を」と話す。前回トップの自民の浅野有は地元衆院議員を招いた演説会で「税収を上げるため、観光振興やホテルの建設に取り組みたい」と訴えた。
(統一地方選取材班)