統一地方選2019

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<改革いずこへ 4・7名古屋市議選> (上)緊張関係

2019年3月20日

「円滑な議会運営を」との願いから円形に配置された議席に座る議員ら。左手奥、日の丸の手前に河村市長が座る=名古屋市議会で

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 「庶民革命」を掲げる河村たかし市長が就任して丸十年となる四月、河村市政で三度目となる市議選が行われる。特定の組織にくみしない市長の誕生は、首長対議会の緊張をもたらし、議会に改革を促した。露出が高まり議論が活発化した一方で、無用な対立による停滞などの弊害も出た。市議選を前に、改革の成否を考えてみる。

 「そんな失礼な質問がありますか!」

 全国でも珍しく円形に配置された名古屋市議会の議場で河村たかし市長が気色ばむと、ぐるりと囲む議員たちがあざけるように笑い合った。

 十五日に閉会した選挙前最後の定例議会。市長が命を燃やす名古屋城天守の木造復元事業で、完成が遅れた場合の責任について最大会派・自民の二期目議員が追及。質問によほど腹を据えかねたのか、市長は何度もさえぎっては議長に制止された。

 ベテラン市幹部が感慨深げに振り返る。「市長はああいう『トムとジェリー』的なやりとりは嫌いじゃないが、期数の若い先生にも議場でおちょくられる場面なんて、かつてはなかった」

 オール与党化した議会との対決姿勢を打ち出した河村市政が誕生して、四月で十年になる。目玉施策を巡って議案の否決や修正が相次ぎ、議会不信の高まりから解職請求による出直し市議選で市長与党・減税日本が大勝したのは、八年前。二十八人いた減税議員が相次ぐ不祥事などで八人にまで減った今、市長優勢だった議会との関係は逆転しつつある。

 「今年も議員の発案ばかりだ」。今期で引退する長老議員は二〇一九年度当初予算案の施策一覧を眺め、そう思ったという。

 「ええ提案ですわ」「ぜひやらせてもらいます」。河村市長は市役所内の発案より外部提案を好む傾向にあり、減税議員が減少して以降は特に、他会派の議員が施策を提案すると激賞して職員に検討を指示し、そのまま予算化されるケースが増えてきている。

 「議員は自分の手柄が欲しいものだが、こんな利益誘導型の質問は昔なら許されなかった」。この議員はそうこぼすが、市役所内には「河村市政になって提案が通りやすくなり、議員の政策立案能力は上がった」との見方が強い。事実、議員提案条例の可決数は、前任で市教委出身の松原武久市長時代が十二年で二十七本に対し、河村市長になってからは三十七本と増えている。

 一方で、名古屋城など市長のこだわりが強い一部の施策を除くと、議場で丁々発止の議論が交わされる機会は減った。対立しているはずの市長の人気にあやかろうと、自分の地域行事に市長を参加させる他会派の議員も出てきている。

 「議会は初めこそ極端に個性の強い市長に手を焼いていたが、今や慣れたものでうまく操縦している」。別のベテラン市幹部による現状分析だ。適度な緊張感ある議論が失われつつある、とも解することができる。その傾向は変わるのか、さらに強まるのか。河村市政になって三度目となる市議選が近づいている。

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統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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