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推移する局面と
勝利の蓋然性

プロ野球局面勝率データベース

中継を途中で打ち切ったテレビに毒づきながらラジオをつける。ああ、俺は古い人間だとも。『8回裏ツーアウト2塁1塁、1点を追うドラゴンズの攻撃...』野球は将棋のように局面が移行するゲームだ。

どんなスポーツでも「グラウンド(コート)ではなんでも起きる」といわれるが、野球の場合は少し違う。先頭打者に満塁ホームランは打てないし、ノーアウトで2人以上の走者がいない限りトリプルプレーは生まれない。

イニング・点差・アウトカウント・走者で表したプロ野球のすべての局面(過去10年間)を遷移図(サンキーダイヤグラム)にすると、以下のようになる。

151,802イニングの先頭打者のうち、68.6%は凡退して一死ランナーなしに移行する。無死3塁に移行する0.5%は、要するに三塁打を打ったということだ。ホームランを打った2.3%は再び無死ランナーなしになる。終了している33例(0.0%)のうち31例はサヨナラホームラン、2例は雨天終了だ。

無死1塁36,643回の9.2%は二死ランナーなしに移行、ダブルプレーを喫したわけだ。走者が一人出ているだけアウトになりやすくなり、アウトカウントが増える例は69.8%に上昇する。

送りバントで1死2塁になったあたりから『グラウンドではなんでも起きる』ようになる。2死2塁に移行する42.2%のほとんど三振だが、ヒットで走者憤死、打者走者が2塁に進んだ例もある。

このような攻撃局面の移行は3アウトになるまで続く。過去10年では、2019年の広島-ヤクルト2回戦と23年の中日-横浜18回戦で16回局面移行したのが最長だ。

すべての局面(658,081回)を点差・ランナーとイニング・アウトカウントで配置すると以下のようになる。

縦軸は得点差と塁上のランナーを表し、上に行くほど優勢になる。横軸はイニングとアウトカウントを表し、右に行くほどゲームが進行する。パーセンテージは、その局面を経由したすべての試合で結局勝った比率(勝率)を表す。

1回に1点リードすると、2回の冒頭(無死ランナーなし)で勝率はすでに62%になっている。

1点リードのまま5回を終えると、6回冒頭の勝率は72%。2死ランナーなしに進むと68%に下がる。この回に追加点を得る可能性が減ったためだ。

1点リードで9回を迎えた無死ランナーなしの勝率は86%。しかし、さらに優勢な無死1・2塁になると81%になる。この不思議な現象は、27試合(22勝)しかないことからくる確率的揺らぎ(誤差)と、9回に2連打されるような乱打戦では自軍の投手も打たれる可能性が高いためだ。

逆に、1点負けていても9回無死満塁の勝率は88%で、1点勝っている無死ランナーなしの場合よりも高い。無死満塁は蓋然性としては「すでに2点取っている」ことになる。

『野球は9回ツーアウトから』の現実は、1点差の時で勝率2.7%、2点差なら0.7%、3点差なら0.1%だ。

基準を100%から次第に下げながら、それ以上の勝率の局面だけを表示すると、当然、得点差とランナーに応じて局面が増えていく。注目すべきことは、ところどころで順序が逆になっていることだ。

ゲーム終盤の2・3塁の局面と満塁の局面を注意深く見比べると、勝率が逆転しているところが目立つ。満塁策が有効であることの傍証だ。すべての局面ではないが、概ね5%勝率を下げることができる。

2025年9月21日の中日-巨人23回戦は、初回に失点したものの、2回に石伊雄太が田中将大から逆転2ランを打ち、6回に突き放した試合だ。すべての局面の勝率をつなぎ合わせた『勝率曲線』は以下のような形になった。

中日-巨人23回戦@バンテリンドーム
123456789
G2000000002
D12000200x5

データで野球を分析するセイバーメトリックス(野球統計学)では、WPA(Win Probability Added)という名前で各選手の「勝率向上分」を集計、ゲームの勝利に貢献した度合い、いわゆる「勝負強さ」を図る指標とみなされている。ただし、実際には打率・長打率の高い打者がWPAも高く、勝負強さだけが突出する選手はいない。やや頭でっかちな数値だ。

1回同点無死ランナーなし この場合の勝率が50%、負ける比率が47%だからといって、野球は先攻有利とはいえない。試合開始直後の先攻(1回の同点無死ランナーなし)の勝率は44.6%しかなく、負ける蓋然性がはるかに高い(ビジターチームだから)。1回の同点無死ランナーなしは、1回表を0点に抑えた場合(全試合の75.2%)しかなく、その場合の(条件付き)勝率は56.6%もある。プロ野球の場合、先攻後攻とホームビジターは完全に連動しているため、両者の影響を切り分けることはできない。

満塁策が有効であることの傍証 満塁策は次の打者の力量を考慮して決めるため、勝率の低下は作戦の効果だけではない。

データ 試合経過は日本野球機構の公式データを使用した。