羽田空港の駐機場に並ぶ日本航空の機体
羽田空港の駐機場に並ぶ日本航空の機体(共同)

空路の地政学

ウクライナ侵攻の領空相互閉鎖

ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁措置として、欧州諸国は2022年2月26日、ロシアの航空会社の領空通過を禁止した。ロシアも対抗措置として欧州航空会社の領空通過を禁止。アメリカも欧州に追随した。日本の航空会社も安全確保のため、ロシア上空の通過を避ける航路に変更した。

航空機が自分の位置や速度を電波で広報するADS-B情報を集積しているサイトFlightradar24のデータを使い、アジアと欧州を結ぶ航空機の航跡の変化をみてみよう。

羽田の欧州便はこれまで、日本海を北上してロシア領空に入り、中国を通らずに西に向かい、サンクトペテルブルク周辺を通過して、各都市に向かっていた。

JL43:羽田ーロンドン線(侵攻前)

日本航空は4日から、コロナ禍の影響で大幅に縮小している欧州路線をロンドン線に集約、その先を提携先航空会社に引き継ぐ方針に変更した。

最初のJL43便は、4日昼に羽田を経ち、アメリカ・アラスカ上空から北極圏をかすめ、グリーンランド、アイスランド上空を通過してロンドン・ヒースロー空港に同日夕(現地時間)に着いた。飛行時間は15時間弱だった。

1986年4月にシベリア上空を通過する直行便を開設する以前は、給油のためにアラスカ州アンカレジに立ち寄っていたが、燃費が向上した現在はその必要がない。

アラスカ経由の欧州便は、2014年にアイスランドのバルダルブンガ山が噴火し、周辺が飛行禁止になって以来の運行だという。

JL43:羽田ーロンドン線(侵攻後)

全日本空輸も4日からロンドン、パリ、フランクフルトの旅客便を欠航にし、ブリュッセルから戻る貨物便を中央アジア上空を経由するルートに変更した。

NH232便は、ブリュッセルを5日夜に離陸し、イスタンブール、カスピ海、カザフスタン、北京の上空を通過して、6日夕(日本時間)に成田に着いた。飛行時間は13時間だった。この路線は、ファイザー製の新型コロナ・ワクチンを輸入する生命線だ。

NH232: ブリュッセルー成田線(侵攻後)

コロナ禍でも日本路線を維持していたルフトハンザ(ドイツ)、エールフランス、スイスエアラインズも中央アジア経由に変更した。北極上空から見ると、日欧路線がロシアを大きく取り巻いている。

欧州航空会社を含めた日欧空路(侵攻後)
影響を受けないインド、中国

韓国は2月28日、輸出制限やSWIFT排除など対ロシア制裁に参加し、日本と同じ立場だが、航空会社はルートを変更していない。(3月15日からルートを変更した)

ロシアと関係深いインド、ロシア制裁に明確に反対する中国の航空会社もシベリアルートの恩恵を享受している。

中国もインドも、アメリカ東海岸からの直行便は、ロシアを通らないでは航続距離が届かない。ウクライナ侵攻後の空路は、2国の地政学をそのまま表している。

データについて 航空路の航跡データはFlightradar24のデータを利用した。地球儀には米NASAのScientific Visualization Studioの画像を使用した。