木星と土星
800年ぶり急接近

2020年12月21日に大会合

地球から見た木星と土星が最接近する会合が、12月21日の宵の口、西の空で起きる。今回の会合は、約800年ぶりに2つの惑星が0.1度まで近づき、望遠鏡でツーショット写真を撮ることができる最初の機会になる。

地球から2つの惑星が接近して見える現象は一般的に「会合」と呼ばれる。そのなかで木星と土星の会合を「大会合」(Great Conjunctions)と名付けたのは、17世紀の天文学者ケプラーだ。2つの惑星の見かけの角度が0.1度までに接近する大会合は、西暦元年から3000年までの間に7回しか起きない。そのうち、769年と1623年の2回は、太陽に近いため肉眼では観測できなかった。今回の大会合は、1226年3月4日の未明以来、約800年ぶりの天体ショーになる。

21日午後6時に名古屋から見える光景は、以下のようになると予測されている。望遠鏡では、木星のエウロパや土星のタイタンなど、6つの衛星が見えるかもしれない。

大会合が珍しい理由

大会合が珍しいのは、木星と土星が地球と比べて5-10倍も太陽から離れているため、ゆっくり公転しているからだ。

木星は、太陽の周りを一周(公転)するのに11.9年かかり、土星は29.5年かかる。

木星が1周して元の位置に戻っても、その間に土星も先に進んでいる。このため、追いつくにはさらに8年近く公転する必要がある。

この結果、およそ20年に一度、地球から見た木星と土星は、同じ方角に見える。

しかし、接近度合いは同じではない。2つの惑星の公転面がわずかにずれているからだ。

木星は、地球と比較すると1.3度斜めに公転している。

土星は、木星から約13度回転した軸を中心に、地球の公転面から2.5度傾いて公転している。

このため、2つの惑星がどの程度離れているかは、会合ごとに違う。おまけに、地球がどの位置にいるかによって、見かけの角度も変わる。

このような複雑な位置関係から起きる大会合は、コンピューターを使った力づくの軌道計算によって予測されている。それによると、5521年後の西暦7541年には、木星によって土星が完全に隠れる「土星食」も起きる。

計算した米ライス大学の天文学者パトリック・ハーティガン教授は、大会合に科学的な重要性はないとしながらも、天体や自然、過去と未来を結びつける教育的意味を強調する。

「1226年といえば、元寇で神風が吹いた48年前です。だから、若いころに大会合を見た人の中には、元寇を体験した人もいたかもしれません。これほど珍しい現象を見るのは、彼らと我々だけなのです。また、次の大会合は2080年なので、いまの若い人は再び大会合を見るかもしれません。その時、この時代のことに思いを巡らすのではないでしょうか」

木星・土星の会合シミュレーター

以下のグラフィックスは、各地で各時間に「会合」がどのように見えるかをシミュレーションしている。木星と土星の白い線は、12月の1カ月間の軌道を表す。

時間を変更すると、木星と土星の中間点が常に画面の中心に表示するよう、視点の向きが計算されます。マウスホイール(スマートフォンではピンチアウト)で拡大できます。

データについて 名古屋から見た21日のコンピューターグラフィックスは、米ライス大学のパトリック・ハーティガン教授の提供による。12月の木星・土星・地球の座標は、米航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所が公開している天体情報システムHorizonsを使用した。