コロナが変えた航跡

航空輸送が半減した日本の空

1月23日、ANAは7月の東京五輪を見据えた新年度事業計画で、国際線14路線の新設・増便を打ち出した。その夕、中国の武漢国際空港が閉鎖され、成田発武漢行きの便が欠航になった。28日夜には邦人を帰国させるためのチャーター機を飛ばす。30日、同社は連結売上2兆300億円、経常利益1370億円の業績予想を再確認する。2020年がどんな年になるか、誰も想像できなかった。

本記事は横向き画面を想定しています。

新型コロナウイルスの感染は、4月に第一波のピークを迎える。政府が外国人の入国拒否を73カ国に拡大し、国内航空会社の国際便は平年の2割にまで急激に縮小した。国内主要空港を結ぶ幹線の運行本数は5月に平年の約15%まで落ち込んだ。

国内感染者が1日平均100人以下に抑えられていた6、7月、国内線の便数は急回復する。7月22日に始まった国内旅行補助金によって、8月は平年の8割まで戻った。このころコロナ第二波がピークを迎えた。

航空機の運行情報を解析するOAGのデータによると、日本は主要国のなかでは減少幅が小さい。国内線が大きく、ロックダウンも行われなかったためだ。

しかし、国際線では、かろうじて門戸を開いているアメリカ、欧州路線に数便が残るのみ。邦人家族の帰国のために運行される臨時便を除き、韓国・中国線が消滅したままだ。

貨物輸送が頼み

国際線では、人の往来は途絶えたが、モノの往来はほとんど減っていない。貨物輸送は通常、専用機だけでなく旅客便の貨物スペースも使われる。旅客便が激減した現在、航空輸送の需給が逼迫し、運賃が2倍近くに高騰している。

このため、人を乗せずに物を運ぶ変則運用が、航空会社の命脈をつないでいる。

航空機が自分の位置や速度を電波で広報するADS-B情報を集積しているサイトADS-B Exchangeのデータを使い、本州上空の民間機の航跡を比べてみると、コロナ以前とコロナ以後で航空機の種類が激変したことが分かる。

コロナ前の航跡

赤色が国際線薄紫色が国内線黄色が貨物専用機を表す。内訳は国際線が53%、国内線が41%。

今月の航跡

運行本数はコロナ前から2割減った。航跡が乱れているため、増えたようにみえる。国内線が65%、国際線は28%。

空港周辺の航路は地上の風向きによって刻々と変わるため、単純には比較できない。しかし、東京と西日本、韓国・中国を結ぶ「空の幹線」はほぼ固定されている。

視点をに移すと、コロナ前には明瞭だった幹線の航跡が失われたことがわかる。

コロナ前のの空

北の空
東の空
南の空
西の空
北の空

12月のの空

東京と西日本、韓国・中国を頻繁に行き来するシャトル便が描いていた明瞭な航跡が失われた。

北の空
東の空
南の空
西の空
北の空

10月27日、ANAは21年3月期の業績見通しで、連結売上高が7400億円、損益は5100億円の赤字になることを発表した。コロナの収束が見通せないなか、銀行から劣後ローンを4000億円、公募増資で3300億円を調達したほか、乗務員にもボーナス見送りなどの犠牲を強いている。それでも、機体の更新や新ブランドを準備するのは、空の旅の需要が必ず回復すると信じているからだ。

国内ではワクチン投与の効果が表れる時期さえ見通せない。相手国の事情にも依存する国際線がいつ元に戻るかは全く分からない。ANAは23年度末までかかると予想している。

データについて 主要国の週間運行数はOAG提供のデータを使用した。国内航空会社の運用実績は、国土交通省の航空輸送統計調査を使用した。航跡は、ADSB Exchangeのデータを利用した。