ひみつ展のこぼれ話

Commentaries on the making of The Science Behind Pixar

PIXARのひみつ展の制作に関わった
ボストンサイエンスミュージアムスタッフ、
アラナ・パークス氏による本展のこぼれ話を
紹介していきます。

1

展覧会製作のきっかけ

2005年、ピクサーは「美術(アート)に特化した展覧会」を開催しました。
しかし、そこでは美術をバーチャル3Dアニメーションに転化させた技術系スタッフの仕事は展示されませんでした。
そこで、技術系の展覧会をやりたいと考え、過去にボストンサイエンスミュージアムが開発した展覧会『Star Wars:Where Science Meets Imagination』を観たピクサーが、共同開発者として声をかけてくれたのです。

ピクサーとの共同開発は、約12年前(2021年時点)に始まり、完成までに約5年間を要しました。
展覧会として何をメインに伝えていくか、どう伝えるか、紆余曲折の結果、今の展示となっています。

こぼれ話の画像

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2

展覧会製作チーム

この展覧会は、ピクサー・アニメーション・スタジオとボストンサイエンスミュージアムが共同開発した展覧会ですが、その中でも、ボストンサイエンスミュージアムのチームはコンテンツ開発者2名、グラフィック、フィジカル、テクニカルデザイナー、ソフトウェア開発者、評価者、ファブリケーター、プロジェクトマネージャーなど、20名ほどで編成されていました。
ここにピクサーのスタッフも加わったのですから、すごいマンパワーをかけて作られた展覧会となっています!

こぼれ話の画像

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3

パイプライン

展覧会開発にあたり、ピクサーの制作フローを確認すると、どれも非常に複雑で展示としてその流れをどう見せるか悩みました。この製作フローをまとめた展示が「パイプライン」です。

パイプライン展示内アニメーションの背面グラフィックを見ると、各工程を結ぶ矢印があちこちに飛んでいます。このように一方通行ではない製作工程こそがポイントなんです。
ちなみに、会場に壁がなく自由動線なのは、この各工程を行ったり戻ったりするプロセスを体現しています!

こぼれ話の画像

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4

回転させて立体をつくる

私たちが展示物を作る際は、試作を作り観客でテストします。
テストする事で、私たちが意図する事が伝わっているか?間違った理解をしていないか?をチェックします。
この点では、展示「回転させて立体をつくる」はとても苦労した展示のひとつです。

ドリルで回転させたり、箱をかぶせたりとテスト結果に対し試行錯誤を繰り返した結果、最終的に今の形に落ち着きました。

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5

フェイスリギング
ワークステーション

人間の顔には30種類以上の筋肉がありますが、ピクサーのメインキャラクターの顔には700点以上のリグ(動きの支点)があります。このリグを動かすことで、様々な表情を作り出しています。

この体験展示の開発には、手を伸ばせる範囲が限られた方にも体験してもらえるよう電動車椅子の観客と試作を作りテストしました。その結果、腕のリーチを考えると、スライダーの数は9個が限界である事が分かりました。たった9個のスライダーで「顔には700点以上のリグがある」という概念をどうやって伝えるか検討を重ね、動かす対象を「目」だけにする事にしたのです。

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6

ピクサーの挑戦 セット

展覧会でご覧いただける動画は、ピクサー作品のDVDの特典映像を制作しているチームによるもので、ミュージアムスタッフ一番のお気入りは「ピクサーの挑戦」です。
ボストンサイエンスミュージアムのチームがアイデアを考える事もありますし、ピクサーから素晴らしいアイデアが出る事もあり、双方のアイデアを往復させ説得力のある動画を作りました。

「ピクサーの挑戦 セット」は2本目に取組んだ動画で、ミュージアムスタッフお気に入りでもあります。
この動画では、主に数学が語られ、ピクサーの考え方がよく現れています。
また、展覧会開発に大きく関わってくれたシニアテクニカルディレクターのエベンさんが出演しているのもお気に入りのポイントです。

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7

コンピューター
アニメーション
ワークステーション

「リアルな動きを再現するための論理と数学」というピクサーのアニメーション工程の基本を表しているのがこの展示です。
非常にテクニカルな様々な方法を試しましたが、混同してしまうくらい複雑でした。

展示開発では、伝わりやすさ、分かりやすさを考えて「科学を簡略化」して表現する事があります。
しかしこの展示では、簡略化ではなく、その技術の本質を表現できたと考えています。
その証拠に、ピクサーのアニメーション担当スタッフがこの展示を指差して「これだよ!これが僕がやってる仕事なんだ!」と言ってくれました。

観客にとっては非常に分かりやすく、かつ、プロも納得するレベルで技術の真髄を押さえている展示、それこそ我々が最後まで目指したものでした。

こぼれ話の画像

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8

クラウド
シミュレーション
ワークステーション

この展示も開発段階でたくさんの変更が発生した展示の一つです。
手作業ではなく、コンピュータープログラムを調整する事によって題材となる動きをつくってもらう事を意図していました。
最初は「レミーのおいしいレストラン」に出てくるネズミが、キッチンでどのように行動するのかプログラムできる体験展示をつくりました。動くスピード、真っ直ぐ進むのか曲がるのか、障害物に対してどのように反応するのか、整列して行動するのか自由に行動するのか、ルールを調整できるプログラムです。
しかし、ここで大きな問題が発生します。誰も本物のネズミの動きを見た事がなかったのです。
なので、この問題に直面してからはどのように進めれば良いのか分からなくなってしまったのです。
最終的に「ファインディング・ニモ」の魚の群れを使用するアイディアに辿り着き、完成に至りました。

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9

ライティング
イマーシブ展示

アルファベットで各工程名が記された展示が全部で8つあります。
この展示をイマーシブ(没入型)展示と呼んでおり、この展示は各工程のイントロダクションであり、ランドマークでもあり、フォトスポットでもあります。

ライティングのイマーシブ展示は、非常に分かりやすく「照明とは」を学べる展示になっています。
照明の2つの側面「明暗と色」を変化させる体験ができるだけではなく、あまり意識しないかもしれない3つ目の側面「動き」も体験できます。
これらの要素の調整で得られる結果は様々であり、明暗と色次第でサンゴの見え方が全然違ってくることがわかります。それに、ここではドリーとも写真が撮れます!

こぼれ話の画像

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10

展示と解説づくりのひみつ

私たちは、展示を製作する時は観客に協力してもらい、テストを繰り返します。
出来るだけ早く、低コストに試作を、時には紙やダンボールで作り、約10名の観客に観せ改良点を探ります。その際に解説もテストします。

この展覧会の解説も、最初は長い文章に小さな図がついた科学館によくある一般的な解説からスタートしました。
しかし、テストの結果、解説を読んでくれるのは観客全体の7%に過ぎない事が分かりました。
そこで、せっかくピクサーの美しいイメージが使えるんですから、文章と図の比率を逆にする事にしました。
大きなイメージにほんの少しの解説にすることで38%の観客が解説を読んでくれるようになりました。
まだまだ少ないように思われるかもしれませんが、実際には悪くない数字だと思います。

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名古屋市科学館担当学芸員より

アラナさんのこぼれ話、いかがだったでしょうか?展覧会の裏側を知ることでさらに展示を楽しむことができると思います。
それに、アメリカの科学館の展示の作り方などディープな話も聞けて、目からウロコな方も多いのではないでしょうか?

PIXARのひみつ展は 2/23(火)まで絶賛開催中です。みなさまのご来場を心よりお待ちしております。