花形の流儀 モーグル・堀島行真

「成功イメージ」を常に思い描きながら試合に臨む堀島行真=2017年12月、中国・張家口で(共同)

理想の滑り、常に頭に

 世界選手権覇者ではあるが、「僕はすぐに悪いことを考えてしまう」と強気になりきれない。フリースタイルスキー・モーグル男子で注目の20歳、堀島行真(中京大)は自身をそう分析する。ネガティブになりがちな思考を排除すべく、移動の合間やちょっとした時間があれば、滑りの「成功イメージ」を頭の中で繰り返すという。

 「理想の滑りが頭の中に常にあって、自分の滑りとのギャップがまだあるなと」。競技のスタート順を待つ間も、エア(空中技)の回転動作を生み出す両腕を実際に上下左右にと動かしながら、うまく滑るイメージを膨らませる。五輪の金メダル候補に一躍浮上することになった昨年3月の世界選手権のスタート台でもそうだった。順番を待つ緊張で呼吸は荒くなりながら、頭の中にこぶの位置、着地のラインをはっきりと描いていた。

 小学時代にモーグルを始めて以来、国内大会で好成績を残してきたが、決して自信家ではない。派手に喜んだり悔しがったりという感情の起伏をあまり見せない性格もあるが、「今までどの大会も自信を持って臨んだことはない」と打ち明ける。

 中学3年でワールドカップ(W杯)にデビューして以来、世界と戦ってきて、その壁の高さを謙虚に知るからこそ。「レベルの低い大会で『絶対に勝てる』と思っているくらいの自信じゃ、世界に挑んだって勝てるわけがない」

 成功イメージを意識して描くようになったのは、W杯で予選敗退が続いていた高校3年の冬だった。そのシーズンのW杯開幕戦が行われるフィンランドへの遠征前、家族からもらった本がイメージトレーニングに関する内容だったという。「それまでもイメージすることを考えていたけど、本を読んで大切さが分かって、ずっとやっている」

 ただ、それだけで常に結果を出せるほど強くないことも自覚する。迎えた今季。注目のW杯開幕戦(昨年12月)は8位に終わった。しかもその予選はまさかの28位。予選下位者で争う2回目で挽回して上位16人による決勝へ進むスリリングな展開だった。全力で挑んだつもりだったが「世界選手権の気持ちの持ち方に比べれば、ちょっと劣っていたかな」。ただその失敗から、あらためて気付いたこともあった。緊張と集中の重要性だ。

 「良い緊張感が良いパフォーマンスを生むと、荒川静香さんが以前にテレビで言っていた」。トリノ五輪フィギュアスケート女子金メダリストの言葉を思い出す。緊張感が大きすぎると重圧となって押しつぶされることもあるから「その兼ね合いが大事」と自分を見つめる。緊張感との戦いを制して世界選手権で頂点に立ち、王者として迎えた五輪シーズン。「気持ちの持ち方を大切にしていければ」。平昌では、思い描き続けた「成功イメージ」通りの滑りで、頂点を目指す。 (上條憲也)

堀島行真の主な国際大会成績

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