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<『安倍支持』のわけ 長期政権と有権者>(3) ネット保守「愛国」共鳴

2019年6月30日

トランプ米大統領との強固な関係をアピールする安倍首相のツイッター。後方は、自民党ネットサポーターズクラブを案内する党ホームページ

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 広島県の大学四年生前田直樹(24)=仮名=は皇室を敬愛している。明治天皇の玄孫で、保守の論客として知られる作家竹田恒泰の講演を高校時代に聞いたのがきっかけという。

 ネットには親しんでいる。竹田のツイッターでの発言をチェックし、講演で知り合った仲間とはLINE(ライン)で対話。ネット利用者向けの自民党の後援組織「ネットサポーターズクラブ」には入っておらず、自民ファンでもないが、参院選は首相の安倍晋三率いる自民に投票する。「自分は保守。投票していいと思える党は他にないし」

 ネットの保守層と安倍には、浅からぬ縁がある。

 二〇〇〇年以降に国内で広がったネット。中国などの隣国や、「左派」とされる一部国内マスコミに反発する「右寄り」の書き込みが目立った。このころ、小泉政権で頭角を現した安倍は、北朝鮮による拉致問題がライフワークで改憲を持論とする保守のホープ。ネットでも期待された。

 自民がネットの保守層を取り込もうと、ネットサポーターズクラブをつくったのは旧民主党政権時代の一〇年だ。会員は選挙でビラを配ったり、ネットに支援の書き込みをしたり。自民党関係者が証言する。

 「彼らは愛国者を自任し、弱腰な民主党政権に国を任せられないと思っていました。尖閣諸島近くで中国漁船が海上保安庁の船に激突する事件がありましたが、『対応が甘い』と怒っていた」。選挙も熱心に手伝ったという。「自民を政権に復帰させたのは自分たちだと自負していましたね」

 現在の会員は約二万人。期待した改憲が実現しないなどの不満もあり、かつてほど熱心でないとも指摘される。それでも先日、参院選を前に開かれた会員の総会で党広報本部長の衆院議員松島みどりは「皆さまが頼りでございます」と持ち上げた。

 ネットニュース編集者の中川淳一郎によると、安倍政権で、ネットへの情報発信が巧みなのは、外相の河野太郎という。

 父の洋平は宮沢内閣の官房長官時代、従軍慰安婦への旧日本軍の関与などを認めた「河野談話」を発表したことを保守層に批判されるが、太郎のツイッターはよく、父親と混同されることを「ネタ」にする。

 「だから、河野談話は私の談話ではないっちゅうに」「俺は(選挙区のJリーグのチーム)ベルマーレ圧勝した時しか談話を出さないよ」。最近は香港デモについて「香港の友人として、最近の情勢を大変心配しています」と書いた。中川は「香港に同情的な、反中のネット保守層を意識して書いている」とみる。

 広島県の前田が最近気に留めたのは、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」をめぐるニュース。防衛省の調査データに誤りがあった上、防衛省職員の居眠りが見つかり、配備候補地の秋田市での説明会は荒れた。参院選に向けた与党の不安材料と報じられるが、前田の友人が説明会に参加し、ツイッターの投稿で住民側の姿勢を疑問視した。「説明会というより反対派の演説会って感じ」「怒鳴る人が多い」−。

 そんな人いるよなと前田は共感し、友人の投稿を自身のツイッターに転載した。

 (文中敬称略)

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